とつか町だより

アクセスカウンタ

zoom RSS 新字体・旧字体

<<   作成日時 : 2007/03/02 02:23   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

日本は戦後の「当用漢字」制定以来、ある程度簡略化した漢字を使っているわけだが、明治以来の伝統的な活字書体にこだわりを持っている人も多い。簡略化した字体を一般に「新字体」と呼び、これに対して「康熙字典」に根拠を持つ(と言われる)字体を一般に「旧字体」と呼ぶ。「新字体・旧字体」とは別に、もともと字体が二種類以上ある場合の「異体字」という考え方もあるが、この違いは必ずしも明確なものではない。
※それにしても「康熙字典」の「熙」の字には異体字が多い。手元にある学研の「漢字源」という漢和字典には6種類の異体字が掲載されていおり、うち5種類がJIS X 0213:2004にも収録されている。

さて、この前までぼくはほとんど意識したことがなかったのだが、法令等に根拠を持つ「常用漢字表」や「人名用漢字」にも、いわゆる旧字体が掲載されている。まず常用漢字表については、簡略化した字体を使った文字の横に括弧付きで旧字が示してある。「表の見方」には、
括弧に入れて添えたものは,いわゆる康熙(き)字典体の活字である。これは明治以来行われてきた活字の字体とのつながりを示すために添えたものであるが,著しい差異のないものは省いた。
とある。「いわゆる康熙字典体」という表現も気になるが、ここでは簡単に「旧字体」と言っておく。

数えてみると、1945字のうち355字には旧字体が添えられているが、「あれ? これは載ってないの?」というのもある。大きなところでは「青」の下の部分が「円」になっているものがない(清・晴なども同様)。部首では「食へん」や「しんにょう」の違いも無視されている。「羽」や「平」のような、昔の活字では点の向きが違ったのではないかと思われる字についても掲載がない。これらは「著しい差異」とは見なされなかったわけである。一方、「勉」の旧字体などは、よほど気をつけて見ないと違いが分からない。また、「闘(鬭)」「覇(霸)」「褒(襃)」「翻(飜)」などの括弧付き字体は、漢和字典によっては「異体字」とされているもののようだ。
※手元の漢和字典では、「闘」の旧字体は、「鬪」である。

人名用漢字については話がもっと複雑だ。戸籍法施行規則にある「漢字の表」は2種類に分かれているが、常用漢字表にない漢字の表(従来の「人名用漢字別表」)については、19の漢字について2つの字体が示されている。また、常用漢字表にある漢字とつながりのある209字を集めた表がそれとは別にある(従来の「人名用漢字許容字体表」)。そして、2004年9月の大幅追加の際に加わった文字については、2000年12月に国語審議会が答申した「表外漢字字体表」に基づいた字体が示されており、基本的にいわゆる康熙字典の字体である。

人名用漢字の一覧を仔細に見ていくと、いろいろと矛盾があるように思える。ぼくが特にややこしいと感じるのは、同じ人名用漢字の中に、「1点しんにょう」と「2点しんにょう」や、「ネのしめすへん」と「示のしめすへん」のような、JIS的に言うと部分字形の違う文字が混在していることだ。しんにょうを例にとると、「迪遥遼蓮」は1点しんにょう、「辻迂迄辿迦這逞逗逢遙遁遡遜樋漣蓬謎」は2点しんにょうだ。2004年9月以前から人名用漢字だった字は1点で、2004年9月に加わったものは、「表外漢字字体表」の字体を反映しているため、2点ということになる。
※ここで挙げた2点しんにょうの文字については、日本語フォントがJIS90対応かJIS2004対応かによって、表示される字体が異なる。JIS2004対応のフォントであれば、すべて2点しんにょうで表示される。

しんにょうについては、もうこれは歴史的な経緯ということで仕方ないのかもしれないが、それとは別に、「遥」・「遙」は新旧字体が両方使えるが、「瑶」・「瑤」は新字体しか使えないなどの不徹底もある。「琢」には旧字体があるのに「啄」にはない、「渚」には旧字体があるのに「曙」にはないなど、同様のケースが何箇所かある。また、常用漢字の別字体の一覧についても、「壊」「偽」「盗」など人名にはまず使わないような漢字が掲載されている一方で、「学」「沢」「蛍」などは掲載されておらず、どういう基準で定められたのか、表を眺めただけではよく分からない。

これも実は歴史的な経緯なのであって、「人名用漢字許容字体表」というものの性格が関わってきている。この表は1981年の人名用漢字追加に合わせて制定されたのだが、この改正時に「字体」についても整理・見直しが行われ、過去に「当用漢字表」や「人名用漢字別表」に掲載されたことのある字体については、混乱を避ける観点から、「当面の間用いることのできる字体」として認めることとした。これが「許容字体表」である。2004年9月の大幅追加の時、この「当面の間」という考え方はなくなった。常用漢字や従来の人名用漢字の旧字体であるかどうかに関わらず、使用頻度が高く、要望が多ければ、追加されることになったということである。先ほどの「遙」はこうした考えのもと、2004年9月に追加された字である。「瑤」は要望が高くなかったのかもしれない。

まとめると、現在の人名用漢字における「旧字体」とは、

(1)過去に「当用漢字表」「人名漢字別表」に掲載されたことのある字体(旧「人名用漢字許容字体表」に掲載されていた字)
(2)2004年9月に追加された字のうち、常用漢字の旧字体であるもの
(3)2004年9月に追加された字のうち、2004年9月以前の人名用漢字の旧字体であるもの
(4)2004年9月に新旧セットで追加された字の旧字体

のいずれかだということになる。(4)には「桧」に対する「檜」、「祢」に対する「禰(示+爾)」がある。「2004年9月に単独で追加された字のうち、常用漢字・従来の人名用漢字とつながりのないもの(「鷗(區+鳥)」など)については、対応する「新字体」がないのだから、「旧字体」と表現するのはおかしいだろう。
※なお、純粋に行政の手続のためものである人名用漢字の表には、常用漢字表と違って、「いわゆる康熙字典体」がどうこうという表現はない。また、新旧の差というよりは、明らかに「異体字」だと言える「薗(園)」「嶋(島)」「盃(杯)」なども「常用漢字につながりのある字」として掲載されている。表外漢字字体表で例外的に簡略な字体が示された「讃」「餅」の立場は微妙だ。

これらの話とJISコードの改正の歴史を絡めると話はさらに複雑に、かつ面白くなってくるようだ。もう少し調べてまとめてみたい。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
新字体・旧字体 とつか町だより/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる