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zoom RSS 当用漢字字体表について覚え書き

<<   作成日時 : 2007/04/16 01:08   >>

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戦後の国語改革の中で、漢字制限の手段として制定された当用漢字。漢字の文字数を制限するという思想そのものもさることながら、字体を簡易字体に変更したことについても、いまだに評判がよろしくない。いわく、無原則に字体の変更を行った結果、漢字という大切な文化が破壊されたという。
ただ、つぶさに見ていくと、無原則というよりは、「現状追認」という原則があったのではないかとぼくには思えるが、今にして思えば「活字字体」と「書き文字」を分けて考えるのが正解だったような気がしないでもない。それはそれで難しいけど。。

ともあれ、実態としてどんな変更が行われたのかちょっとまとめたうえで、気になったところをピックアップしてみる。

(1)当用漢字制定(1946年)時点で字体が変更されたもの

当用漢字制定の官報に掲載された漢字表は、明朝体の活字で発表されている。示偏は「ネ」ではなく「示」の形、「食偏」は「飫」の左の形、「しんにょう」は二点となっている。その他、「青」や「平」などの字体も、古い活字の形である。
当用漢字表の前書きには、「簡易字体については,現在慣用されているものの中から採用し,これを本体として,参考のため原字をその下に掲げた。」という一文がある。したがって、「参考のための原字」が掲載されている以下の131文字が、当用漢字制定字に簡易字体が採用された字ということになる。
圧囲医壱隠栄営駅円塩欧殴穏仮画会絵拡覚学岳勧関歓観帰犠旧拠挙区駆径茎経軽継欠研献権鉱号済斎剤参蚕惨賛残糸歯辞実写釈粛処称証触嘱図随髄枢数声窃浅践銭潜双総属続堕対体台滝択沢担胆断遅虫逓鉄点当党独読届弐悩脳廃麦発蛮浜併並辺変弁宝豊万満訳予余誉乱両猟礼励霊齢恋炉労楼湾
※ただし、示偏・食偏・しんにょうは古い形が使われている。
ここで注意が必要なのは、これらの字体が、良い悪いは別にして、戦前から使われていたものであり、このときに作られたわけではないということである。たとえば「双葉山」は決して「雙葉山」ではなかった。

さらに、のちに常用漢字表において「いわゆる康熙字典体」として示された旧字体があるにも関わらず、当用漢字制定時点で現在と同じ字体が使われていた漢字が以下の6字である。
効殺煮痴勅免
これらの漢字は、戦前から現在の字体がむしろ正字だと意識されていたものと思われる。勅語や詔勅といった言葉は戦前よく使われていたものだが、「敕」の字はあまり使われなかったらしい。谷崎の「痴人の愛」は「癡人の愛」と書かれたことはない。
なお「煮」については、「者」「著」などが点ありなのに、この字だけが何故か点なしであることから、意図して簡易字体を掲載したものではなく、単なる誤植だと思われる。

(2)当用漢字字体表(1948年)で字体が変更されたもの

当用漢字制定時、字体についてはなお調査中とされており、上記の131字は先行して簡易字体が採用されたということになるのだが、字体調査の結果として出てきたのがこの「当用漢字字体表」である。手書き風の文字で発表されている。この字が「新字」の基準となっているわけだ。示偏・食偏・しんにょう、「青」「平」などは、以前から手書きでは現在の字体同様に書かれていたのではないかと思うが、字体表が定められたことにより、活字も変更されることになった(印刷書体と筆写書体を一致させるのが字体表制定の目的の一つであった)。その他、大きな字体の変更(JIS X 0213の包摂規準外となるような変更)が行われたのは、ぼくが数えたところ以下の198字である。
亜悪為逸衛謁縁応桜奥横温価禍悔海壊懐慨概楽渇巻陥寛漢気祈既器偽戯虚峡狭郷響暁勤謹勲薫恵掲鶏芸撃県倹剣険圏検顕験厳広恒黄国黒穀砕雑祉視児湿社者寿収臭従渋獣縦祝暑署緒諸叙将祥渉焼奨条状乗浄剰畳嬢譲醸神真寝慎尽粋酔穂瀬静摂節専戦繊禅祖壮争荘捜巣装僧層騒増憎蔵贈臓即帯滞単嘆団弾昼鋳著庁徴聴懲鎮転伝都盗稲徳突難拝売梅髪抜繁晩卑秘碑賓敏侮福払仏勉歩墨翻毎黙薬与揺様謡来頼覧欄隆虜緑涙塁類礼暦歴練錬郎朗廊録
※「礼」は(1)と重複。(礼からさらに変更)
字体表の中で、「従来活字としては普通に用いられていなかったもののうち著しく異なったもの」には、従来の普通の形を下に付すということになっているのだが、この選定基準がどうもよく分からない。単なる明朝体の癖と思われる、「述」の「ホ」の右下の点が「乱」の右の形になっている字体が「従来の普通の形」として掲示されていたり。「術」も掲示されていれば首尾一貫するのだが、こちらにはない。あまりよく練られていない表のように思える。

あと細かい点として、「叙」「闘」は、当用漢字(制定時)、当用漢字字体表、常用漢字に参考で付された「いわゆる康熙字典体」との間に以下のような揺れがある。



当用漢字表当用漢字字体表常用漢字(康熙別掲)
闘(鬭)
叙(敍)

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